労働保険の種類と概要

法人や個人経営の会社で働く労働者は、雇い入れている事業主より弱い立場にあります。ケガや病気、失業などで生活の糧である収入が途絶えると生活することが困難になります。

そこで、労働者やそれを雇い入れる事業主がお金を出し合い、保険制度に加入し、万が一に備えようとするのが労働保険です。制度の公平性を保つため、政府が保険制度の主体(保険者と言います)となって運営しています。そうしたことから、労働保険は一部の事業を除き、強制的に加入しなければなりません。

労働保険には、仕事中または通勤途中でケガをしたり、病気になったりあるいはそれが元で障害が残ったり、死亡してしまうことに対して保険給付を行う「労働者災害補償保険」と、失業して収入が極端に減り生活が困窮したり、給与の減少により就業を続けることが困難になったりすることに対して保険給付を行う「雇用保険」があります。

労働者災害補償保険(労災保険)の概要

労災保険は労働基準法第75条~88条に規定されている「業務上の傷病による労働者の不利益を事業主が補償しなければならない義務」をひとつの法律にまとめたものです。業務上のケガや病気は事業主に責任があるという原則から、原則として労働者を使用する事業は強制的に労災保険に加入しなければなりません。もしも、加入していない事業で保険事故が起きた場合でも、労働基準法に労働者に対する事業主の補償義務が明記されていますから、事業主の責任は免れません。

したがって、労災保険は事業主が加入する保険なので、労働者は保険料を負担する必要はありません

労災保険の給付には、ケガや病気を治療する「療養補償給付」、ケガや病気で仕事ができないため賃金を得ることができない場合に所得補償をする「休業補償給付」などがあります。

雇用保険の概要

雇用保険は、一般的には失業保険と呼ばれていて、失業したときの所得補償をしてくれる給付がメインの保険です。しかし、失業以外にも、育児休業したときに所得がゼロか極端に減ってしまったのを補償してくれる給付や、スキルアップのために種々の教育訓練を受講したときに、その受講費用の一部を支給する給付など、およそ雇用にまつわる様々な保険事故に対して給付を行うことをメインとした保険です。

雇用保険は労災保険とは違い、事業主と労働者双方が保険料を出し合います。したがって、給与から天引きされる労働保険料は雇用保険料だけということです。

雇用保険の給付には、失業して次の職を得るまでの一定期間所得補償をする「求職者給付」、再就職を促進するための「就職促進給付」、あるいは失業の予防や雇用状態の是正などの措置を講じた事業主に対して、助成金を支給する「雇用二事業」などがあります。

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