労災保険適用事業

原則は、労働者を1人でも雇う事業所は労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業となります。ただし、次の事業に関しては当分の間、加入、脱退が自由にできる任意適用事業とされます。

暫定任意適用事業・・・個人経営の農林水産業で常時雇用する労働者が5人未満の事業

ところが、上記条件に該当する事業でも、農業については、経営者が特別加入()している事業や特定の危険又は有害な作業を主として行う事業で、常時労働者を使用するものは強制加入の対象となります。また、水産業については、船員法第1条に規定する船員を使用して行う事業、総トン数5トン以上の漁船による水産業の事業(河川、湖沼及び災害発生の恐れの少ない特定水面において主として操業する事業を除く)は強制加入の対象となります。さらに、林業については、常時1人以上労働者を使用する事業、1年以内に使用労働者数が延べ300人以上となる事業は強制加入の対象となります。

暫定任意適用事業
経営形態 労働者数 業種 例外(強制適用事業)
個人経営5人未満農業・経営者が特別加入している事業
・特定の危険又は有害な作業を主として行う事業
水産業・船員法第1条に規定する船員を使用して行う事業
・総トン数5トン以上の漁船による水産業の事業(河川、湖沼及び災害発生の恐れの少ない特定水面において主として操業する事業を除く)
林業・常時1人以上労働者を使用する事業
・1年以内に使用労働者数が延べ300人以上となる事業

国の直営事業及び官公署の事業(現業(ゴミ収集など)事業で非常勤は除く)については、労災保険の適用はありません。国家公務員や地方公務員については、国家公務員災害補償法や地方公務員災害補償法などが適用されるからです。

適用事業で使用される労働者は、常用、日雇、アルバイト、パートタイマーなど雇用形態は一切問われません。雇用期間も条件とはされませんから、災害発生時に適用事業に使用されていた労働者であればそれで足ります。

特別加入

労災保険は使用者に雇われている労働者が入る保険ですが、小さな事業所では事業主も労働者と同様の業務に就いている場合が多く、業務災害に被災する確率は労働者と同じくらいあります。そこで、中小事業の事業主及びその家族従事者、一人親方といわれる事業主一人で事業を行う者、海外へ赴任している労働者を対象に、労災保険に特別に加入できる制度です。

労災保険料

労災保険料は、その事業で使用する全労働者の1年間における賃金を合計した額とその事業の労災保険率によって算出されます。既述の通り、労働者には日雇、アルバイト、パートタイマーなどその事業に使用される者は全員含まれます。

労災保険料=年間賃金総額×労災保険率

賃金総額

請負による建設の事業、立木の伐採の事業、立木の伐採以外の林業(造林・木炭又は薪の生産)、水産動植物の採捕又は養殖の事業において、賃金総額を正確に算出することが困難な場合には特例が認められています。

請負による建設の事業:賃金総額=請負金額×労務比率

立木の伐採の事業:賃金総額=素材1立方メートルを生産するために必要な労務費×素材の材積

立木の伐採以外の林業(造林・木炭又は薪の生産)、水産動植物の採捕又は養殖の事業:賃金総額=厚生労働大臣が定める平均賃金×使用期間の総日数

労災保険率

労災保険率は事業の種類ごとに定められていて、一般的に危険を伴う作業や業務内容の事業は保険率が高く、その逆は低く設定されています。

また、労災保険率には非業務災害率として、各事業一律の0.06%が含まれています。この非業務災害率とは、労災保険法の適用を受ける全ての事業の過去3年間の通勤災害に係る災害率及び二次健康診断等給付()に要した費用の額その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める率です。

二次健康診断等給付

各事業所で行われる定期健康診断で、脳血管疾患、心臓疾患に係る所見すべてに異常が認められたときに、精密検査等を受けることができる労災保険給付です。もちろん検査にかかる費用は全額無料です。

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