社会保険の種類と概要

狭義の社会保険は医療保険である「健康保険」「介護保険」、年金保険である「厚生年金保険」があります。このほかに、原則75歳以上が加入する高齢者医療制度がありますが、75歳以上の現役労働者は少ないと思いますから、このサイトでは省略しています。

健康保険は運営主体(保険者)が大企業中心の健康保険組合、健康保険組合のない企業が加入する全国健康保険協会の2種類に分かれます。保険給付に関してはどちらも同等の内容となっていますが、健康保険組合では規約で定めれば上乗せ給付を行うことが可能となります。全国健康保険協会が運営する健康保険は、各都道府県によって保険料率が異なります。これは医療費の増大に伴い、各都道府県で医療費抑制の施策をすることによって保険料率を抑えてもらおうという狙いがあります。

介護保険は、従来医療制度が担ってきた加齢による長期入院患者を切り離して、予防介護という概念も加えた独立した社会保険となりました。介護保険に要する費用は、国、都道府県、市町村が5割を負担し、各医療保険(健康保険、国民健康保険、共済組合など)が約4割、残りの約1割を被保険者の保険料で負担します。

厚生年金保険は、老後の年金だけではなく、ケガや病気による障害、死亡に関しても給付を行います。厚生年金保険に加入すると同時に国民年金にも加入することとなりますから、厚生年金保険の保険料には被保険者自身の国民年金保険料と被扶養配偶者(いわゆる第3号被保険者)の国民年金保険料も含まれます。厚生年金保険の保険料が高いのはそのためです。

健康保険の概要

健康保険は日本で最初にできた医療保険です。大正11年に制定され、昭和2年から施行されました。最初は鉱山労働者が中心でしたが、次第に工場労働者へと広がり、ホワイトカラー、女子へと加入者を広げていきます。戦後の健康保険は国が運営主体(保険者)となり全国一律の保険料率を設定していましたが、平成20年10月1日から都道府県単位の保険料率を設定する方式に変わり、全国組織として全国健康保険協会が設立されました。これは都道府県別に医療費をみてみるとばらつきがあり、医療費抑制努力を保険料に反映させるべきとの声があったためです。

全国健康保険協会が保険者となる組織の他に大企業を中心とした健康保険組合を保険者とする組織もあります。戦前の健康保険はこの健康保険組合が中心でした。健康保険組合は一定範囲の中で組合独自の保険料率を定めることができます。若い労働者が多い健康保険組合は医療費がそんなにかからないので保険料を抑えることができます。逆に、若い労働者の少ない組合は総じて保険料が高くなります。そこで、健康保険組合が集まって全国組織を作り、財政の厳しい健康保険組合を相互に助ける仕組みがあります。

介護保険の概要

以前は加齢や病気等で身体の自由がきかなくなったお年寄りは、日常生活上の世話や看護ができる病院へ入院するしかありませんでした。しかも、この入院患者はケガや病気の治癒のようにまた元の日常生活へ復帰できる見込みの薄い方達がほとんどでした。したがって、入院は長期にわたり、病気やケガで入院しなければならない患者に影響がでてきていました。何軒もの病院をたらい回しにされる問題がクローズアップされるようになりました。

そこで、こういった長期入院している人達を別の枠組みで面倒を見ようという主旨で考案されたのが介護保険制度です。介護保険の特徴として、要介護状態になる前の段階から支援し、できる限り地域、自宅で生活できるようにする仕組みを作ったことです。予防医療は裾野が広すぎてなかなか全体の底上げができませんが、予防介護はある程度外科的内科的に的を絞れますから、効果を発揮していると思います。

介護保険に加入しなければならないのは、その市町村に住んでいる65歳以上の人(第1号被保険者)と40歳以上で医療保険に加入している人(第2号被保険者)です。介護保険の給付に要する費用は第1号及び第2号被保険者から徴収する保険料で5割賄い、残り5割は公費(国:25%、都道府県:12.5%、市町村:12.5%)となります。

厚生年金保険の概要

厚生年金保険は、1942年(昭和17年)に工場労働者(男子)を加入者とした労働者年金として発足しました。その後1944年(昭和19年)に女子労働者、事務労働者を加えて、厚生年金保険と改称されました。こうして、昭和61年の年金大改正までは会社勤めの人が加入する年金制度として機能し、年金額も加入年数に応じた定額部分と給与に比例した報酬比例部分の2階建てで支給されていました。

昭和61年大改正で、老齢厚生年金は従来の定額部分が国民年金の老齢基礎年金となり、2階部分に従来の報酬比例部分が老齢厚生年金として支給されるようになりました。ただし、現在は旧法(昭和61年3月以前)から新法の移行期間にあたり、老齢基礎年金と報酬比例のみの老齢厚生年金との組み合わせ支給は平成38年5月からとなります。

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